東京都足立区、北区、葛飾区を中心に、病院・医院・クリニック、在宅・訪問医療、介護サービスを提供する医療法人社団福寿会です。
   
 
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在宅サービス研究発表会
     
 
 
 
 
 
  
 
第8回在宅サービス研究会
脆弱性胸腰椎圧迫骨折による疼痛の評価
福岡クリニック 整形外科
骨粗鬆症が進行した高齢者やステロイドを服用している方が、転倒しなくても不用意に着座しただけでも、脊椎の椎体の部分がつぶれてしまうことがあります。
脊椎の圧迫骨折は、背中や腰のつよい痛みのため、寝返り・起き上がり・立ち上がりが困難となり、要支援あるいは要介護状態が長く続くことも少なくありません。
 
今回、脆弱性の胸腰椎圧迫骨折による痛みを評価する方法として、患者さんが自ら答える質問票を作成し、
これを臨床試験に用いましたので報告させていただきます。
方法は、まず22項目からなる質問票を開発し、これを用いて予備調査を実施し、信頼性および妥当性を検討しました。
構成概念妥当性は赤池の情報量規準(AIC)という統計量を用いて、項目間のネットワークを描いて確認しました。
22項目からなる質問票は、「寝床での動作の痛み・困難」、「離床時の姿勢・動作の痛み・つらさ」、
「行動の抑制」、「気分・不安・健康感」というドメインで構成されることがわかりました。
臨床試験は、カルシトニン筋注による介入群を試験群とし、対照群は非ステロイド性消炎鎮痛剤の内服として無作為に割付け、開始4週間後の結果を比較する方法(RCT)で行いました。
臨床試験の結果は、2010年7月の第22回日本運動器リハビリテーション学会で報告します。
 
患者さん自身が答える質問票のことをPatient-Reported Outcome Measure、略してPROM、といいます。
PROMとして広く使われているものに、患者さんのQOL評価としてグローバル・スタンダードなSF-36があります。
こうしたPROMを用いて介入の効果を評価し、有効性を検証するようになってきました。
米国の食品医薬品局(FDA)もつい最近2009年12月にPROMについてのガイドラインを発行しました。
 
演者はこれまでに、変形性膝関節症の質問票とこれを用いた大腿四頭筋訓練および貼付剤の臨床試験、腰痛症の質問票とこれを用いた運動療法の臨床試験について、患者立脚型質問票の開発、信頼性・妥当性の検証、臨床試験の解析、論文作成を担当しました。特発性側弯症の質問票、痛みによる睡眠障害の質問票については予備調査を実施しました。
質問票の構成概念妥当性をデータに基づき検証する方法については、心理学関係の書籍 ”Psychological Tests and Testing Research Trends” に分担執筆し紹介しました。
 
ロコモティブ・シンドロームのツールである質問票「足腰25」については、今年に入り和雑誌で報告しました。
今年度は「足腰25」などを用いて、厚生科学研究として採用された要介護重症化予防の調査研究をすすめています。
要介護者のQOL向上をはかるため、引き続き足立区での訪問診療に従事しながら、全国の医療・介護サービスを提供する機関と連携して、提供している介入の有効性を検証し、わが国からエビデンスを発信していきたいと考えています。
第8回在宅サービス研究会
人工骨頭挿入術のクリニカルパス導入に向けて
赤羽岩渕病院
はじめに
 
当院の入院患者の平均年齢は81才と高齢者が多い。
脳血管障害によるセルフケア能力の低下があり経口から食事を摂取できず介助を必要としたり、骨折や心不全の治療による長期安静で廃用性症候群になり易い患者が多くいる。
誤嚥性肺炎や認知症で経口から食事が摂れず経管栄養をしている患者もいる。
また、脱水や栄養状態が低下して補液や高カロリー輸液を行うこともある。
ADLが自立していないうえに治療過程で過度に安静を強いてしまうと、筋力低下や認知症が進行し更にADLが低下してしまう。
そのため入院時に立てたゴール設定の変更を余儀なくされることが多い。もともとのADL状態が悪いと、一つの病気を治しても退院に至るまでに多くの問題を抱えることになる。
このことが当院の在院日数を長期化させている原因のひとつであると思われる。
そこで在院日数の短縮を図るため、どのようなクリニカルパスなら当院の入院患者の特性に合うのか、導入は可能であるかを考えた。そして整形外科の分野においては実現可能ではないかと思い、比較検討をしたので報告する。
方法
 
人工骨頭挿入術のクリニカルパスを用いて当院の術後の経過とを比較し、どの部分なら合わせられるのか、
かけ離れている部分はどこなのかを探し問題を明らかにした。
考察
 
当院での離床は14〜21日で保存的治療に比べれば早いとも言えるが、今後は手術をするメリットを生かすためにもクリニカルパスを導入する必要がある。
スタンダードのクリニカルパスは高齢者も対象としており、術後1日目から一定期間までなら当院でも適応するのではないか。
昨年の入院患者の科別では整形外科は全体の13%であった。骨折に限ると6%であった。
この6%にクリ二カルパスを導入した場合、どれくらいの在院日数が短縮されるかは未知である。
だが、当院独自のクリニカルパスを作成することによって在院日数の短縮やコスト削減までには時間がかかるが、医療の質の向上は実現できると思われる。
第8回在宅サービス研究会
転倒、骨折しないための効果的な運動、体操とは何か?
うぐいすデイサービスセンター
高齢者が「転倒・骨折」してしまった。という話は、よく耳にします。
主な原因としては、疾病等からくる身体的要因と、家の中の段差等からくる環境的要因が考えられると思います。
今回は、身体的要因の一つとして考えられる「左右の下肢の筋肉量」と「バランス能力」の相関性に注目して、考察してみたいと思います。
つまり、下肢筋肉量に大きな左右差があることが、立ち上がりや歩行時の体の傾き、ふらつきを引き起こし、
「転倒・骨折」の原因の一つになっているのではないかと考えたからです。
通所施設の多くは、毎日のプログラムの中に、何らかの運動や体操を取り入れ、利用者様一人ひとりのADLの維持向上を図っております。
当センターでも毎日、マシントレーニング等の個別プログラムを30分、ボールやセラバンド、バランスマットを使った体操やストレッチを午前、午後60分ずつ、最大で約2時間30分の運動や体操を取り入れ、積極的にADLの維持向上に取り組んでおります。
しかし、実際は、運動プログラムに積極的に参加している人、していない人に関わらず、「昨日、夜トイレに行く時、転んでしまった。」、「買い物していたら、シルバーカーが前に行って転んでしまった。」等、転倒報告をよく耳にし、転倒率は前者、後者ともさほど変わりはないように思っております。
そこで、今回、(株)I・T・C協力のもと、全身の筋肉量を測定できる、「フィジオンMD」を活用し、下記の3つの条件に留意しながら、運動プログラムを実施しております。
 
(1) 下肢筋力(大腿・下腿)の筋肉量を測定する。
(2) その中で筋肉量の左右差の大きいご利用者様をリストアップする。
(3) 理学療法士の助言のもと、「トレーニングを実施するにあたってのルール」と「運動プログラム」を構築する。
 
最後に、評価方法として、運動プログラムを実施する前と実施した後の2回、筋肉量の測定を実施し、
その差を把握すること。当センターで実施している体力測定の中から、ファンクショナルリーチ(動的バランス)と開眼片足立ち(静的バランス)を同じく実施前、
実施後の2回測定することとしております。
「転倒しないための筋肉」を集中的に鍛えることで、その筋肉量がどのように変化するのか、
また、「筋肉量のバランス」を整えることで、「身体のバランス能力」は、改善するのかというところに迫って見たいと思います。
第8回在宅サービス研究会
福寿会の訪問リハビリテーションの現状
リハビリテーション支援センター
はじめに
 
平成22年2月に行なわれた、リウマチトータルマネジメントフォーラムで、リウマチ患者の訪問リハビリについて発表した。
今回は、その内容を中心に発表する。
当法人の訪問リハビリ概要
 
・リハビリの訪問サービス:病院、診療所からの訪問リハビリ・・・福岡クリニック在宅部
在宅部の訪問診療を受けている患者を対象に行なっており、介護保険での訪問リハビリが中心だが、医療保険での訪問も行なっている。
訪問看護ステーションからの訪問看護・・・かもめ訪問看護ステーション
介護保険の訪問看護としてリハビリ専門職が看護師と交代で訪問するが、難病の方には医療保険の訪問看護として訪問することもある。
・訪問リハスタッフ数:11名(専従PT2名・OT2名、兼務PT3名・ST1名、非常勤PT2名・OT1名)
・患者数:104名(リウマチ:6名) ・平均年齢:74.6歳(リウマチ:78.5歳)
・主疾患:整形疾患・・・43%、脳血管障害・・・31%、神経難病・・・15% ・医療的処置:30%の患者が必要
・介護度:要介護3〜5・・・70%、介護保険の対象外・・・10%
・ADL:全介助・・・47%、一部介助・・・43%、自立・・・10%(リウマチ:全介助・・・2名、一部介助・・・4名)
・訪問回数:週1回・・・65%、週2回・・・27%(リウマチ:週1回・・・1名、週2回・・・5名)
症例
 
症例1:O氏 65歳 男性 開始時の介護度:要介護4 ADL:全介助 訪問開始理由:通院困難
現在の介護度:要介護5 リハビリ内容:関節可動域、筋力の維持
リフトを使用し車椅子乗車可能だったが、リフト使用中に腰痛出現してから、リフトの使用・車椅子乗車を拒否され、現在ベッド上寝たきりとなっている。
症例2:H氏 64歳 女性 開始時の介護度:要介護4 ADL:全介助 訪問開始理由:通院困難
リハビリ内容:筋力、拘縮の改善
訪問開始以前に肘・膝の人工関節置換術を受けている。手術後のリハビリが順調ではなく、訪問リハビリに対して拒否的であったが、少しずつ意欲が出てきている。
症例3:S氏 83歳 女性 開始時の介護度:要介護3 ADL:一部介助、室内歩行可能
訪問開始理由:少しずつ動きにくくなり、通院が大変になってきたため
リハビリ内容:関節可動域・筋力・体力の維持、疼痛の軽減、ADL・福祉用具などの評価・指導。
訪問開始後に人工膝関節置換術を受けたが、訪問開始から8年たった現在も、訪問リハビリ開始時のADLが保たれている。
現在も、訪問開始前から通院していた大学病院への通院は継続。
考察
 
リウマチの多くは、通院困難となるまで生活場面でのフォローがされないケースが多い。
実際の生活場面でのアプローチを早期からこまめに行うことは、QOLに大きな影響を及ぼすと考える。
 
QOL向上、患者の負担軽減のために、早期から病院と在宅医療の連携が行われることが望ましいと思われる。
一般的に訪問リハビリは維持期のリハビリと言われているが、適切な時期に適切なリハビリを行うことが重要で、
そのことがADLの維持に繋がると考える。そのためには、主治医からの早期の在宅医療への指示や、
ケアマネージャーからの早期の依頼が必要で、それによって早期からの在宅でのフォロー、訪問リハビリが可能になる。
また、適切な時期に適切なリハビリを行うことが重要なのは、リウマチに限らず転倒を防ぐ為にも重要で、
状態が変化し始めた時に、機能訓練や住環境の整備などを行なうことで、転倒、骨折によるADL低下を予防することが出来ると考える。
 
第8回在宅サービス研究会
介護老人保健施設しらさぎにおける転倒防止への取り組み
介護老人保健施設しらさぎ
はじめに
 
入所の現場は様々な身体機能の方々が集まり、生活しているため転倒・転落事故は施設にとって長い間抱えている問題である。
その中、当施設2階(重度認知症フロアー)において平成21年11月に7件、12月にも7件の転倒・転落事故が発生するということがあった。
それに対して2階フロアースタッフとリハビリスタッフとで事故が起こった背景・原因を探り、事故防止対策を検討した。以下にその経過を報告する。
背景
  当施設2階は重度認知症フロアーであり、急な立ち上がり、徘徊があるなど転倒の危険性の高い利用者が多く入所している。
加えて、11月に重度の認知症で転倒の危険性のある新規利用者が数名入所した。
それにより前述した利用者達に対して近位監視や付き添い介助等の対応が必要となり、他利用者に目がいき届きにくい状況があった。
 
11月に転倒・転落事故→7件
12月に転倒・転落事故→7件(うち3件が骨折にて転院)
   
対策
 
まず、2階フロアーミーティングで業務の改善案をまとめた。
事故が多く起きている時間帯は6時〜7時、9時30分〜11時30分に多い。この6時〜7時という時間帯はもともと離床介助やトイレ介助にスタッフが取られ、フロアーでの対応が手薄になってしまう事が多々あった。そこで、離床させる順番を決め、6時よりトイレの訴えがあった人のみ離床させる。
その後、7時に朝番スタッフが来て人数に余裕がある状態になった上で、残りの人達を起こしていくという対応に切り替えた。
そして、9時30分〜11時30分の事故に対しては、午前中は利用者と関わる時間とし、午後に雑務を行なうようにする。情報共有のためにも、早・遅番の人にも申し送りを実施する。
という対応策がとられた。
 
また、2階利用者の各リハビリ担当者が2階フロアーでのリハビリを実施するようにした。
(2階フロアーに平行棒と訓練用のベッドを設置。各リハビリ担当者がフロアーでリハビリを実施しながらフロアーの状況を観察、事故防止に努めた。)
さらに、リハビリスタッフが朝のフロアーでの申し送りに参加し、迅速な情報収集と対応に心掛けるようにした。
結果
 
平成22年1月度は転倒・転落事故7件と事故の減少には至らなかった。
平成22年2月度は転倒・転落事故2件と前月と比べ事故が減少した。
 
第8回在宅サービス研究会
福寿会における作業療法に期待される役割
〜作業療法に関するアンケートより〜
リハビリテーション支援センター
福寿会の作業療法士は、老健・デイケア・訪問リハビリの事業所で、他職種と協働で業務に当たっている。
平成21年11月、作業療法がどのように認識されているかに関し、作業療法士が所属する事業所の職員全員に
“作業療法に関するアンケート”調査を行なった。対象者は160名、125名からの回答(回収率77.5%)があった。
 
調査内容は、対象者の年齢・性別・職種・経験年数・作業療法や理学療法を知っているか、
またそのイメージと業務内容、作業療法の訓練内容の目的、今後作業療法に期待することや、作業療法士の所属する事業所などであった。
結果は、作業療法のイメージは集中する・明るいの順で、業務内容は、ADLにつながる項目を選ぶ人が最も多く、
上肢の機能訓練、その人らしい生活の援助などが多かった。理学療法のイメージは、身体的・動的の順で、
業務内容は徒手的な訓練内容や、呼吸リハが選ばれておりADLアプローチする項目を選んだ人は少数であった。
作業療法の訓練目的は、手工芸は上肢の機能訓練の維持・改善と答える人が最も多く、散歩は気分転換、関節可動域訓練は筋力の維持・改善、グループ訓練は意欲向上、計算は認知機能の維持改善と答える人が多かった。
作業療法に期待することは4つのカテゴリーに分類され、@連携・他職種協働に関することAサービスの質の向上Bアドバイスや指導の要望Cサービスの内容に関しての要望であった。作業療法士の所属先を全て理解している人は125人中19人であった。
作業療法のイメージは前向きな心理状態を表す言葉が選ばれ、業務内容は、徒手的なことではなく、ADLや家事動作などの訓練や生活の再獲得・認知機能関する項目が多く選ばれていた。
 
これは作業療法が身体機能そのものの機能回復を図るということよりも、実際の動作や活動を通しクライエントの持っている能力を引き出し、精神・心理面にも働きかけることが作業療法であると認識されていることを表していると思われ、多くの職員に作業療法の役割が理解されていることが分かった。
作業療法に期待することからはキーワードして“連携”、“一緒に”が考えられ、カンファレンスなどの形式的な情報提供にとどまらず、随時情報交換・情報の共有化をはかることに努めていくことにや、生活場面での関わりを持っていくことが必要だということがわかった。

第7回在宅サービス研究会
研究発表9
訪問診療からの離脱要因 〜危険因子の把握〜
福岡クリニック在宅部
■はじめに
 
平成12年4月〜平成13年3月までに訪問診療からの離脱要因について調べ、当時報告(前回調査と記載する)しているが、平成19年4月〜平成20年3月までの期間において訪問診療からの離脱要因について調べ、前回調査と比べどのように特徴があるのか多少の知見を得たので報告する。前回調査と比べて、訪問診療の地域は東京都足立区の診療地域の他に東京都北区、有料老人ホーム鶴の家、その他グループホームなどと拡大している。
■対象
患者の登録数は月平均486名である。このうち平成19年4月〜平成20年3月までに離脱となった患者は152名(男性54名、女性98名)であった。前回調査と比べ離脱患者の合計数は少し増加した。離脱した男性患者数が同じ、女性患者数が増加した。(前回調査では男性54名、女性88名)
■方法
訪問診療からの離脱した患者について離脱率、年齢分布、家族の構成、キーパーソン、主疾患名、主疾患からの罹病期間、患者の転帰、離脱要因、離脱要因別転帰等について検討した。分析にはSPSSプログラムを用いた。
■結果
 
平成19年4月〜平成20年3月までの期間で離脱率は2.6%であった。前回調査では離脱率は2.5%であり、離脱率はほとんど同じであった。また、離脱までの訪問診療の期間は33.7カ月(前回調査では23.1カ月)であり、前回調査より長いという特徴を認めた。離脱患者のうち死亡は72名(前回調査では死亡は47名)であり、病院死53名、在宅死15名、施設死が4名であった。前回調査に比べ死亡率が増加した。残りの80名(前回調査では95名 )については入院が32名(前回調査では入院が45名)であった。
 
離脱要因として肺炎・呼吸不全、悪性腫瘍、心疾患、特養入所、低栄養・脱水、脳卒中等であった。前回調査と比べ悪性腫瘍、特養入所、低栄養・脱水が増加した。離脱要因別転帰として肺炎・呼吸不全、悪性腫瘍、心疾患、低栄養・脱水、脳卒中では死亡が生存を上回った。前回調査と比べ肺炎・呼吸不全、心疾患、悪性腫瘍では死亡が多いのは同じ傾向であったが今回調査では脳卒中で死亡が多いという特徴も認めた。主疾患と離脱要因では脳血管障害、骨関節では肺炎・呼吸不全を併発し、離脱になることが多いという特徴を認めた(前回調査では認知・精神疾患では肺炎・呼吸不全が多かった)。また、認知・精神疾患では低栄養・脱水で離脱になることも特徴であり注意が必要である。
第7回在宅サービス研究会
研究発表8
誤嚥性肺炎の既往がある廃用性嚥下障害者との関わり
リハビリテーション支援センター
■はじめに
 
介護老人保健施設におけるSTの役割の一つとして,嚥下訓練がある。そこで誤嚥性肺炎の既往があり,廃用症候群を呈した利用者様の状態維持と向上を目的にSTが介入した一例を報告する。
■症例
80歳代女性。
■主疾患
心房細動,嚥下障害,認知症,不眠症
■既往歴
L1圧迫骨折,夜間せん妄,誤嚥性肺炎
■現病歴
  H20.2.26自宅で転倒し肋骨骨折,S病院に入院。同年3.10より嚥下食開始するも誤嚥性肺炎を繰り返した。同年5.3にリハビリ目的で当院に入所する。
■入所時評価
 
嚥下評価,標準ディサースリア検査,HDS-R(20/30)を行った。嚥下機能はミキサー食で3食経口摂取可であった。発声発語器官では,口腔構音器官に制限はほぼみられないが,呼吸機能,発声機能に低下がみられた。指示理解,意思伝達ともにほぼ問題なかった。認知面では顕著な認知症状はないが,記憶力は軽度低下していた。 ADLはほぼ自立,身体面は首の可動域が小さく,腰背部痛があり,全身持久力,筋力低下がみられた。入所当初から薬物の影響によるものか振戦がみられた。
■経過
  入所時,ミキサー食を3食経口摂取し,水分には低粘度増粘剤を添加した。訓練はST/PTとも週5回実施した。STは呼吸訓練,口腔顔面運動,頚部ストレッチ,息こらえ嚥下,頭部挙上訓練,食事形態の調整などを行った。5.14から状態確認を行いながら食形態をあげていき,6.23には全粥,全刻の形態になった。
 
入所当時,独居でも在宅希望があった為,本人の希望に添い食形態を固形物にまであげる目的であったが,入所後に有料老人ホームを希望したため,ゴールが変更となった。時々ムセや透明な痰がみられるも3ヶ月で体重が2kg増え,身体状態の悪化もみられなかった。表情が明るくなり,笑顔が多くみられるようになった.8.3に有料老人ホームに入居した。
■考察
  入所時から全身状態を観察しながらリハビリを行い,ゴールに合わせた食形態の検討が必要である.本人や家族の思いを傾聴し,また安全に食べて頂く為には生活の場であるフロアの看護師や介護士の協力が不可欠である。個々の事情に応じたリハビリを行い,利用者様が少しでもQOLの高い生活を送れるように貢献していくことが重要である。
  

第7回在宅サービス研究会
研究発表7
誤嚥性肺炎予防の看護−意識障害の患者への口腔ケアを通して−
赤羽岩渕病院
■はじめに
 
当院の入院患者の平均年齢は80歳と高齢で、既往に脳血管障害・パーキンソン・転倒骨折・腰痛・麻痺を持ち、極端なADL低下、寝たきりの患者が多い。その為、口腔ケアは看護師によってベッドサイドで行われている。
■概要
口腔衛生が保てないと、細菌によって誤嚥性肺炎を起こしやすい状況にある。細菌が唾液とともに肺に流れ込むと誤嚥性肺炎が生じる。今回、私たちは口腔ケアの根拠・正しい手順・個別性を再確認しながらケアを行い誤嚥性肺炎の予防に努めた。
■対象
○ ○さん / 94才男性
診断名:小脳梗塞 /既往歴:脳梗塞・高血圧・右足関節外果骨折
■実施期間
 
平成21年3月16日〜平成21年3月22日
■方法
 
口腔ケアについての基礎知識の学習・アセスメントを行い、ケアマニュアルを用いて統一したケアを行った。
■考察
 
正しい口腔ケアの方法と、その必要性についてスタッフが再確認し、日々のケアに対する気持ちが向上した。今回のケアの徹底により口腔内環境が清潔に保て、誤嚥性肺炎の予防に有効である。また、患者の生命の維持・QOLの向上にもつながった。
第7回在宅サービス研究会
研究発表6
重曹水を利用した口腔ケア
関原クリニック通所リハビリテーションセンター 
リハビリテーション支援センター
■はじめに
 
口腔機能に着目して利用者のスクリーニングを行うと、舌苔の付着している人がかなり多いことに気がつく。
舌苔は歯垢と同様、細菌の増殖の場であり、誤嚥性肺炎の原因になりうる。誤嚥性肺炎予防のためには、口腔内 を清潔にして、細菌を減らす必要がある。今回、重曹水を使った口腔ケアが、口腔内の汚れ落ちに効果があると 知り、この方法で、舌苔の除去を試みたので報告する。
■方法
新たな口腔ケアを始める前に、利用者の舌苔付着程度を測定し、舌苔スコアで数値化した。
従来の「うがい」による口腔ケアに加えて、「水で舌をブラッシング」する口腔ケアを、食事の後と、おやつの後に、1ヶ月間、実施した。
その後、水を2%重曹水に変えて、舌苔除去を図った。期間は3ヵ月間。
重曹は、制酸剤の他、製菓材料としても使用されており、飲み込んでも安全である。今回は、純度の高い「薬用」を使用した。
■結果
新たな口腔ケア開始の時点で、当施設参加者32人中15人(46,9%)に舌苔が認められた。
舌苔スコアの平均値を比較すると、従来の「うがいだけ」と、「水で舌を1ヶ月間ブラッシングした後」の間では、統計的に有意な差が認められなかった。従って、水でブラッシングしただけでは、舌苔の付着量は、それほど変わらなかったと言える。
「水でブラッシング後」と「重曹水でブラッシング後」の間では、舌苔スコアの平均値に、危険率1%で有意な差が認められた(t=3.63>3.25)。つまり、水でブラッシングしただけでは減少しなかった舌苔が、重曹水を使うことによって減少したと言える。
■考察とまとめ
 
口腔内の細菌を含む食塊や唾液などを誤嚥すると、免疫力や気道防御反応の低下している要介護者の誤嚥性肺炎発症の危険が高まる。口腔ケアが、誤嚥性肺炎に対し予防効果があることから、今回、2%重曹水を使った口腔ケアを行ない、その効果を、舌苔の量で測定してみた。その結果、物理的に擦るだけでは減少しにくい舌苔が、重曹水を使うと減少することが示された。これは、重曹の中和・研磨作用によるものであり、口腔内環境を変えた上で、継続的口腔ケアを行なったためと考えられる。重曹水による口腔ケアは、簡単・安価で継続的に実施できる。法人内の各施設にお勧めしたい。
第7回在宅サービス研究会
研究発表5
経管栄養から軟飯・軟菜へ
介護老人保健施設しらさぎ
■はじめに
 
機能的障害により経管栄養となり、廃用症候群の一途をたどるケースも少なくない。経口摂取移行に伴いADL・QOLが飛躍的に向上した事例を通じて、「食べる」ことの重要性をここで再考する。
■事例紹介
 
K氏、86歳、女性。〈病名〉頻尿症、抑うつ状態、不眠症。1日10本程度の喫煙習慣あり。シルバーカー歩行は監視レベル。食事は常飯・常菜で摂取も飲水量はやや少なめ。動作緩慢だがベッド周囲の行動は概ね自立。言葉数少なく、表情は乏しかった。平成18年4月自宅へ外出の際、玄関先で転倒。左手橈骨を骨折しシャーレ固定施行。それに伴い歩行力低下、車椅子全介助、急激な見当識障害、夜間せん妄により、再転倒の危険性が高まった。5月に入り食思低下、頸部の後屈も顕著にみられ、精査目的のため一時入院となった。6月1日再入所。食事は軟飯・全刻み食で提供するが、痰がらみとムセがたびたび見られ、吸引回数が増加した。発熱を繰り返すようになると、夜間を中心に「ご飯まだ!買い物に行きたい」との欲求が増え、50年以上の喫煙習慣さえも無縁になった。食事の全てをミキサー食に変更するも摂取量は伸びず、9月11日PEG造設に至った。11月11日ST評価を行い、ゼリー摂取可能と判断。しかしこの間、下痢症状が続いたため状態の安定を待ち、12月18日より経管栄養併用にて1日1回の経口摂取を開始した。その後、徐々に言動は落ち着き始め、夜間は良眠されるようになった。平成19年1月より娯楽に興味を示し、2月下旬にはST評価にてトロミを使用せず水分摂取が可能になった。3月中旬よりおやつからのミキサー食提供開始。5月11日からは3食をミキサー食で提供できるまでにこぎつけた。しかし、摂取量半分以下で満腹感を訴える状態が続き、下痢症状と気分不快を繰り返すようになった。
看護は経管栄養と水分量、滴下時間を調整、介護は早食い・口腔内ため込み状況・姿勢を観察、本人には一口20回以上噛む事を説明し声かけにてゆっくり食べることを促し症状は軽快していった。5月17日からは全粥・全刻み食へ変更。5月20日には食思良好にて経管栄養を全面中止、6月5日には胃ろうを抜去した。最終的に軟飯・軟菜となりADLも向上し、シルバーカー歩行も自立となった。
■考察
 
K氏は、うつ状態、表情筋の活動低下、頸部後屈があり、廃用性の嚥下障害を誘発する要因がすでにあったと考えられる。ご本人の『食べたい』という欲求に応えようと多職種連携によって、段階を踏んで経管栄養から経口摂取に移行してきた。経管栄養が離脱できた要因として、次の3点が考えられる。1、不眠症、抑うつ状態にあるK氏に声かけを多くし、軽作業訓練や家族との面会頻度を増やすことで、感覚・運動刺激を与え、日中の覚醒状態を改善できたこと。
 
2、頻尿症があり、もともと飲水量は少なかったが、経管栄養により適切な栄養量と水分量が確保されたことで全身状態が安定。禁煙との相乗効果により肺機能は回復し、痰がらみが消失したこと。3、PEG造設してから3ヶ月で経口摂取に踏み切り、嚥下機能の不活性期間を短くしたこと。
■まとめ
 
各専門職が自己啓発を図り適切な判断能力を養うことは、QOL向上を目指すために重要である。今後も積極的な経口摂取移行へ取り組むために、食事介助中の客観的共通評価が得られる独自アセスメントシートの開発やVF・VE導入を検討していきたい。
 
第7回在宅サービス研究会
研究発表4
くも膜下出血による後遺症により嚥下困難となった
経腸栄養剤使用患者の1症例
福岡クリニック在宅部 栄養課 中村 育子
■目的
 
くも膜下出血を起こして入院・退院後、半固形化栄養剤とお茶ゼリーのみで開始された在宅生活において、徐々に食形態を改善された症例と管理栄養士と多職種連携のアプローチを含め、その経過を報告する。
■症例
 
73歳。女性。身長149cm。平成19年12月くも膜下出血で入院、脳梗塞併発。その後、意識は改善したが構音障害失語症があるので発語は少なく聞き取りにくい。人からの話は理解できる。右不全麻痺。摂食機能障害のためPEG増設。入院中は平成20年4月より嚥下機能評価・失語症評価を目的に言語療法を開始するも、ご本人の評価を含めて言語療法の介入に希望がなく、詳細評価実施はできなかった。観察上、嚥下機能はゼリー可能。要介護5。平成20年7月に退院後在宅診療(福岡クリニック在宅部)となり、すぐに訪問栄養指導も開始となる。お茶ゼリーや半固形化の作り方について指導し、オレンジゼリー、カルピスゼリーなど次第にバリエーションを増やし、ご本人に食の楽しみを感じてもらえるようになる。ゼリーやムースではむせ等が起きない事を確認しながら、9月頃からはポタージュスープ等も摂取していただく。その後、とろみのついたみそ汁、卵豆腐、ゴマ豆腐など食べる物がどんどん広がっていくと、元々甘い物はあまり食べなかった事から甘いゼリーを食べなくなった。通所リハビリのスタッフである看護師やSTに状態を確認しながら、11月から12月にかけては嚥下困難用の食品(ペースト)豚の柔らか煮、鯖の味噌煮、肉じゃがなども食べられるようになり、水分もゆっくりであれば、とろみをつけなくても飲めるようになった。
■結果
 
平成20年7月の退院時の体重は、40.9kgであったが10月の体重は45kgとなり11月には45.5kgとなり経口摂取量も順調に増えている事から栄養剤の量を1200kcalより800kcalに変更した。BMI18.4から20.7へ改善。血清アルブミン値は退院時4.0g/dlから11月では4.1g/dlにやや改善されている。また最初は無関心であった食事についてもゼリーからムース、ペースト状など色々な味の物を食べられるようになった事で、食の楽しみが増えて、食事の時間を心待ちにするようになった。
■考察
 
在宅診療、訪問栄養指導、通所リハビリのスタッフである看護師、ST、家族(娘)、ケアマネジャーが色々な情報を共有できた事により、ST評価はできないものの、様子を見ながら経口からの摂取量や食形態を少しずつ上げられた事は大変良かったと思う。今後は体重が増えすぎないよう、摂食・嚥下の状態、食事量、栄養価やバランスについて、見ていきたい。また介護食が家族(娘)の介護負担とならないよう調理の工夫や食品の紹介等もおこないながら、見守っていく。
 
第7回在宅サービス研究会
研究発表3
在宅における気管内吸引の感染リスクの検討
かもめ訪問看護ステーション
■はじめに
 
在宅において、気管切開し気管内吸引を必要とする利用者は年々増加している。かもめ訪問看護ステーションは、毎月100名前後の利用者の中、10名の方が気管切開され気管内吸引をおこなっている。この10名の気管切開の管理はご家族が任されている。在宅に移行される際に、入院中の病院で気管切開部の処置、吸引手技、物品の管理を細かく指導されている。感染予防の観点やコスト面介護力によって差異が生じている現状があり、その取得してきた方法に準じて物品や手技を継続している。そのため個々のケースで方法が違っており、訪問看護で関わっていく中で戸惑いが感じられた。

今回、気管内吸引に関して、訪問薬剤師より、「チューブ内吸引水を滅菌精製水にする必要があるのか、一度痰を吸引したチューブを通せば滅菌でなくなるので、無意味ではないか」と指摘があった。そこで現在気管内吸引を施行している10名の利用者の現状を把握し、感染予防の観点から検証を試みた。また、当ステーションとしては、在宅での吸引指導の統一を図られればと考えておりここに報告する。
■方法
  10名の気管切開利用者からの聞き取りアンケートからの現状把握
24時間使用した吸引水の細菌培養検査
アンケート結果分析し表にまとめ、細菌培養の結果を比較検討
文献からの気管吸引の手技の確認
 
第7回在宅サービス研究会
研究発表2
健口体操を行なって
かわせみデイサービスセンター
■はじめに
 
かわせみデイサービスでは、他の通所施設と同様に利用者の健康体操を行っています。高齢の方も多いので嚥下障害や誤嚥性肺炎を予防するために、首周りや、口、舌などの運動を取り入れ、予防に努めています。首周り、口など筋肉でできている部分が多いので、ストレッチや力をつけることで鍛えられます。嚥下障害がある場合でも、使わないことによる衰え(廃用症候群)の予防にもなるので、できるものから行ってもらっています。昼間だけやればよいというものではなく、朝は動きが悪くむせやすいので、食事の前には行った方がよいことを話しています。
■実際にやっている体操
 
体操の1から7。
■唾液の健康効果は
@
口の中の洗浄
A
抗菌作用
B
消化作用
C
粘膜の保護、修復作用
D
歯の保護、修復作用
顔の筋肉を動かすことで、唾液腺が刺激されます。唾液が十分に出ているのと、口の中の細菌や汚れを洗い流し、口中を清潔に保ち、高齢者に多い誤嚥肪炎の原因である細菌も少なくすることができます。
唾液腺は、耳の下の耳下線や、あごの下のがつか腺、舌のつけ根の舌下腺ばかりでなく、小さな腺があらゆる所に散在しています。現在は、みなさん方のような若い人でも唾液の量が減っており「乾いた食品を食べる時には、よく水が欲しくなる」「口の中がネバネバする」「会話中に口の中が渇いて話しにくい」「口臭が気になる」などの自覚症状があれば、可能性は大きいと思われます。
どこでも簡単に短時間で出来る健口体操を行い、皆さんも高齢者にならって、いつまでも若々しくいて下さい。
 
第7回在宅サービス研究会
研究発表1
介護老人保健施設におけるリハビリテーションの役割と課題点
リハビリテーション支援センター
■目的
 
2008年度、福寿会リハビリテーション支援センターの教育プログラムの一環として、上半期(4月〜10月)を赤羽岩淵病院での長期研修の機会を得た。その経験を経て、下半期(11月〜3月)を介護老人保健施設しらさぎ(以下しらさぎ)での業務に従事することで、両施設の違いに気付く素地を得た。今回、赤羽岩淵病院にてリハビリテーションを行なった症例と、しらさぎにてリハビリテーションを行なった症例について調査・集計を行い、その結果をふまえ、以下3点に主眼を置き、比較検討したのでここに報告する。
 
@ しらさぎにおけるリハビリテーション対象者の特徴を明確にする
 
A 明確にされた特徴に対し、求められるリハビリテーションの役割を把握する
 
B 現状を整理することによって、しらさぎの現状における課題点を導き出す
 
以上を考察することを目的として、報告を行なう。
■方法
調査対象
赤羽岩淵病院:
2008年5月1日〜10月末日の期間中にリハビリテーションを実施した入院患者94例
しらさぎ:
2008年11月1日〜09年3月15日の期間中にリハビリテーションを実施した長期入所利用者91例
調査項目:
@入院・入所目的 A入院・入所期間 B認知症併発の有無 C脳血管障害併発の有無 D動向を、診療録・入所者記録から調査する。
■結果
 
   
※画像をクリックいただくと拡大画面でご覧いただけます。
 
 
第6回在宅サービス研究会
研究発表5
独居の認知症利用者の方への、ケアマネージャーとしての関わりについて
在宅総合支援センターふくろう
独居の認知症利用者の方が、住み慣れた自宅で自分らしく生活する為のケアマネジメントについて、
担当させて頂いているK氏の事例を通して考察する。
○独居の認知症利用者の方が、症状が進行する中で在宅生活を安心しておくる為のポイント
・本人の意向の確認
・家族との関わり、家族へのサポート
・金銭、書類管理
・内服薬の確認
・医療との連携、通院
・介護保険などの様々なサービスとの連携
・食事
・火の元の管理
・戸締り
・訪問販売
 
 
 
第6回在宅サービス研究会
研究発表4
施設ケアのなかでの個別性 〜アセスメントの重要性〜
介護老人保健施設しらさぎ 
■はじめに
当施設2階フロアーは重度認知症の方が多く利用されています。 団体での施設生活のなかで如何に利用者の
個別性を理解し対応していくべきか事例を挙げ考えてみました。
■事 例
Y氏は施設利用が初めての74歳の女性で、次女と二人で生活されていたが次女からの虐待を受け当施設に入所される。 歩行状態はふらつきがあり付添見守りが必要で帰宅欲求激しくまた「娘が死んだ!」「これからお葬式に行かなきゃ!」「家が火事で燃えてるのよっ!」など妄想も多く訴えられる。 エレベーターが開くたびに乗り込もうとされる氏にスタッフは目が離せず、帰宅欲求や妄想がほかの利用者に大きく影響を与え普段穏やかに過されている方々まで不穏になり、スタッフの日々の業務にも支障がでる状況となり早急な対策が必要となりました。 私たちスタッフはY氏の個別性を見直し氏との会話のなかから趣味や興味のあることがらを見つけ、氏が本来社交的で明るい性格だということから他階やリハビリ科、事務所などの協力を得てY氏への個別対応を実行してみました。
○演芸好きとのことで毎日のレクリエーションの際に氏の好まれる歌を取入れスタッフ見守りのもとで踊りを披露して頂き他者との交流を図る
○スタッフが事務所や他階に用事などある際に氏を連れ他職種からも声かけをしてもらい少しでも気分転換を図る
○午前中化粧道具を用意し自ら行う事で生活にリズムをつくる
○軽作業や塗絵を促し何かに集中する時間をつくる
■結果・考察
Y氏の個別対応の実行により帰宅欲求と妄想は著しい減少がみられました。レクリエーションの際には他の利用者から喝采を浴びスタッフとの会話のなかでも笑顔が見られるようになり、環境の変化からの不安や団体生活からのストレスは解消みられ施設生活にとけこむことができました。
利用者を確実にアセスメントし個別性を理解することにより問題行動を無くし全ての利用者へのケアが十分に行える環境ができると思います。
■まとめ
個々の利用者の個別性をしっかりとアセスメントすることの重要性を私達スタッフは再認識し、日々細かな変化を見落とさず観察し確かなコミュニケーションをとることによりそれぞれの利用者に最適なケアを提供できると考えます。
問題行動があるから個別対応をするのではなく、全ての利用者にも行き届くよう個別性を重視してこれからのケアに努めていきたいと思います。
 
 
 
第6回在宅サービス研究会
研究発表3
介護老人保健施設「しらさぎ」の現状と課題について
介護老人保健施設しらさぎ  施設長 小口迪彦
そもそも介護保険の目的は、@入所介護より自宅介護を重視する、A身体介助よりリハビリに重点をおくことにありました。
この中で介護老人保健施設は介護保険の施設として非常に重要な位置を占めています。
一方、社会的に高齢化が進み、また核家庭の増加などから長期入所介護を希望する人たちが増え、在宅介護に戻すことの困難さが増しています。

しかしながら、最近の“超高齢社会”の到達により病院での死亡から在宅の看取り医療へと変換を図ることが社会的要請となっています。
ここで老健施設「しらさぎ」の現状を報告し、介護保険施設の課題を検討しようと思います。
■方 法
「しらさぎ」の入所者の疾患・病状と、これに対する入退所の動向を一定期間(平成19年10月から平成20年1月)について調べました。
■結 果
ショートステイ(SS)の利用者とロングステイ(入所)の方との比較では、月あたりの延べ数の平均で、SSが55人/月に対し入所者が90人/月となり、入所が2倍弱に達し、又、その入所者の7割が長期入所で6ヶ月を越していました。
入所の原因となる疾患では脳血管障害、認知症(重度)、骨・関節疾患が多く、心臓・血管系疾患と続きました。
特に認知症、骨・関節疾患、心臓病に関しては長期入所の方がショートステイの約3倍に達しておりました。
この事はリハビリ及び介助をするにあたっての困難さとあわせて大きな課題であります。
今回は家庭での介護力については検討できませんでしたがもう一つの重要な課題です。
これらの結果を踏まえて介護老人保健施設の今後のあり方を討論したいと思います。
 
 
 
第6回在宅サービス研究会
研究発表2
介護教室の活動報告
足立区地域包括支援センター本木・関原
■はじめに
地域包括支援センターは地域に向けての事業として一般高齢者や家族介護者に対し予防の広報や啓発を目的とした家族介護者教室や介護予防教室を開催することになっています。
今回、平成19年度を振り返りながら教室開催の活動報告をさせて頂きたいと思います。
■概 要
家族介護者教室では在宅で高齢者を介護している家族の方や一般高齢者を対象に介護の知識や技術、介護者自身の健康管理、介護者同士の交流の場作りなど介護負担の軽減に役立てていただくもの、身近なところで起きている事件や事故の予防になるものなどを行ないました。
介護予防教室では地域住民対象ですが特定高齢者の方にも個別にお誘いし、介護予防6事業(@運動機能向上 A栄養改善 B口腔機能向上 C認知症予防 D閉じこもり予防 Eうつ予防)に沿った内容を実施しています。
■結 果
家族介護者教室は6回開催で延べ150名の参加、介護予防教室は15回開催で延べ279名の参加がありました。教室開催の広報・案内は、あだち広報誌毎月25日版への掲載、町内会の回覧板の協力、過去に教室に参加された方へ個別郵送、地域実態把握で関っている方や、特定高齢者該当の方に直接ご案内などを行いました。
その結果として、合計で429名の方の参加が得られ、アンケートからは有効であった・楽しかった・勉強になったなどの結果も得られました。
■おわりに
教室に参加していただけることが知識の普及・啓発につながり、閉じこもりや認知症予防のきっかけとなり、参加者同士の交流の場ともなります。また、地域の人同士や私達との直接の情報交換ができる場ともなり、地域の活性化につながっていくことが期待できると考えます。
地域への情報発信はすぐに手ごたえや成果があるとは限りませんが、これからも地域の皆様に興味・関心を持っていただける内容の教室開催に努め、介護予防の必要性・重要性を伝えていきながら、地域の各人が意識しながら何等かの取り組みを始めていただけるよう努力していこうと思います。
 
 
第6回在宅サービス研究会
研究発表1
「退院後の在宅での栄養・食事管理のポイントと連携」
福岡クリニック在宅部 栄養課  中村 育子
■はじめに
厚生労働省では平成20年4月から社会保険診療報酬を改定する事となり、この中で後期高齢者退院時栄養・食事管理指導料が新設される事となった。
今回の改定では75歳以上が対象となる後期高齢者医療制度の導入に伴った見直しが大きな焦点となっている。
「退院時における円滑な情報共有の支援の評価」を創設し、栄養管理の情報が退院後にも継続的に行えるような取り組みを目指している。
今回は今までの内部・外部の訪問栄養指導の行い方と、これから栄養情報提供書が患者又は家族に行き、在宅に訪問して見せていただき、それをどう訪問栄養指導で生かし、他病院と連携を取っていくかについて述べる。
■概 要
後期高齢者退院時栄養・食事管理指導料は、栄養管理計画に基づき栄養管理が実施されている入院患者の退院に際して、管理栄養士が医師の指示の下、当該計画に基づき、患者、家族に対して概ね15分以上指導を行うとともに、必要な情報を文章で提供した場合に、退院時に算定する。
後期高齢者退院時栄養・食事管理指導料の対象となる患者は、経口摂取を行う患者であって次の(ア)〜(エ)に揚げる要件の全てに該当するものであること。
なお、経管栄養のみの患者は対象となっていないが、経管栄養と経口摂取を併用している場合は対象患者となる。
(ア)当該指導の実施日において75歳以上であること。 
(イ)低栄養状態にある者。なお低栄養状態にある者とは、アルブミン値が概ね3.5g/dl以下の者もしくはBMIが概ね18.5未満の者又は医師が低栄養状態にあると認めた者をいう。
(ウ)栄養管理実施加算(栄養管理計画書作成)が算定されていること。
(エ)当該指導の実施日において、食事が提供されていること。
管理栄養士への指示事項は、低栄養の状態、栄養補給に関する事項についての具体的な指示を含まなければならない。
他の病院もしくは診療所へ入院するため転院した場合には算定できない等がある。
■考 察
他病院から依頼が来る訪問栄養指導では、ケアマネジャーの情報と医師からの診療情報提供書、訪問栄養指導依頼箋からしか情報がなく、在宅部での訪問栄養指導ではカルテが見られ、多職種と情報交換や相談ができるため、情報量や方向性に大きな違いが見られた。
今回の栄養情報提供書の新設により、病院、在宅間での栄養管理に統一性ができ、病院と同じ栄養管理が在宅で受けられるよう努力したいと思う。また在宅(居住系施設含む)では様々な問題が起こるため、在宅での栄養管理の情報提供書を病院や介護福祉施設に返し、情報共有する事も算定できるような展望を今後期待する。